香港のチョコレート事情

香港のチョコレート消費量が減っている?!

アジアの金融の中心であり、富裕層が多く住まう都市、香港。山の谷間を埋め尽くすように密集する高層ビル群は、「上へ上へ」という香港の経済成長を体現するかのようだ。

そんな香港は、歴史的にチョコレートとの結びつきは薄い。中心部にある香港歴史資料館で香港の誕生当初から近代までの生活ぶりを見てきたが、鄙びたアジアの漁村であった昔の香港には、カカオ文明と共に歩んだヨーロッパやアフリカのような強いつながりは見られない。

香港で「コンフェクショナリー(お菓子)」の概念が発達したのは、イギリス文化が生活に溶け込み始めた植民地時代だった。イギリスにはキットカットを生み出したロウントリー社があり、産業革命以降以降急速に発達したチョコレート文化の先駆けの国でもある。それでも、もともと香港の高温多湿の気候とチョコレートは相性がよくないため、当初口にできたのは一部の上流階級の人間に限られてていた。

香港歴史資料館で見られる、英植民地時代の香港の店舗の様子。アジアとヨーロッパのデザインが混在する。

香港歴史資料館で見られる、英植民地時代の香港の店舗の様子。アジアとヨーロッパのデザインが混在する。

近代化した香港では、チョコレートは「ギフト」として重宝されてきた。日本でも有名な「フェレロ ロシェ(FERRERO ROCHER)」のチョコレートは特に贈答用として有名で、特に過去数年では中国からの観光客が香港でフェレロ ロシェの大量購入する光景が見られた。

そのようなギフトチョコレートの中には、「賄賂」として用いられたものも多かったと思われる。香港における2016年のチョコレート販売額の成長率は、前年比6%だった2015年と比較して2%しか伸びていない(参考)。これには2015年以降香港が中国大陸からの観光客の旅行回数を制限したことに加え、中国の反腐敗政策(anti-corruption policies)の施行により、賄賂の全体数が激減したことも影響していると思われる。

一方で、高所得者が多い香港の人々がチョコレートを楽しむ機会は増加している。鍵となるのは、世界的なチョコレートブランドが多いフランスやベルギーなどのヨーロッパ外資の上陸と、日本を含むアジアの新進気鋭のブランドたち。ここでは、筆者が実際に足を運んで見た数々のチョコレートショップを紹介したい。

南蓮園池の美味しいチョコレートカフェ

南蓮園池のカフェの超美味しいチョコレート

中国茶やスパイスを使ったプラリネが豊富

今回香港で食べたチョコレートの中で、一番美味しく、また一番意外性があったのは、香港中心部から電車で20分ほどの鑽石山(ダイヤモンドヒル)にある南蓮園池の園内にあるカフェだった。南蓮園池は、有名な観光名所「志蓮浄苑」(チーリンジェンユン) の向かいにある中国庭園で、この二つはセットで訪れる人が多い。熱心に祈りを捧げる人々を見ると古代の中国に戻ったかのようだが、近年の都市開発の結果、今では背後に高層ビルが立ち並ぶ奇妙な光景が広がる。

一見普通の中国風のカフェに入ると、入り口横にはガラスのショウケースがあり、15種類ほどのプラリネが並んでいる。ケースの上には「フランスから輸入した素材で手作り」という宣伝文句がある。「卵、アルコール、保存剤不使用」とあるのも寺院らしい(プラリネにはリキュールが入っているものが多い)。南蓮園池のイラストが書かれたギフト用のパッケージもあるが、カフェでも同じものが食べられるので中国茶のお茶うけとして注文することにした。

香港のチョコレート事情

結論から言うと、今回の香港・チョコレートを巡る旅でもっとも美味しかったのはこのチョコレートだった。観光地で販売されているチョコレートというと、安かろう悪かろうのタイプも多いが、このチョコレートは、完璧な温度管理と本当に上質な素材だけが持つカカオの美味しさが感じられた。中身のフィリングのエスプレッソとジャスミンティーも、ナチュラルだが強い味でチョコレートに負けていない。他にもフェアトレードのベルギー産チョコレートも販売しており、この南蓮園池のチョコレート販売にかける意気込みが感じられた。

フェアトレードのベルギーチョコレートも販売。こちらも美味しそう

フェアトレードのベルギーチョコレートも販売。

南蓮園池は志蓮浄苑の向かい側に広がる庭園。「ロータス・ガーデン」の英語名のように、ハスの花のモチーフがあちこちに見られる

南蓮園池は志蓮浄苑の向かい側に広がる庭園。「ロータス・ガーデン」の英語名のように、ハスの花のモチーフがあちこちに見られる

高級ショコラティエの地位を確立したLa Maison du Chocolat

高所得者層が訪れるショッピングモール全てに店舗があった、ラ・メゾン・ドゥ・ショコラ

高所得者層が訪れるショッピングモール全てに店舗があった、ラ・メゾン・ドゥ・ショコラ

日本と同じく、香港でも大人気の「ラ・メゾン・ドゥ・ショコラ」。2017年現在、高所得者が居を構える金鐘(アドミラルティ)のショッピングセンターと、香港一高級と言われる九龍のショッピンセンター、エレメンツの両方に店舗がある。街の駅ビルにもあるゴディバと比較するとこちらは高級路線で、特にエレメンツ店はエルメスなどの一流ブランドと比べても遜色がない店構え。

日本ではヨーロッパの有名ショコラティエブランドは全て揃っているイメージだが、香港では現在のところ、このラ・メゾン・ドゥ・ショコラが一強状態。今後の海外有名ブランドの動きに注目したい。

ペニンシュラはチョコレートの元祖

ペニンシュラホテルの地下のブティックで販売されているチョコレート。

ペニンシュラホテルの地下のブティックで販売されているチョコレート。